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カタカタカタカタカタカタカタカタカタ───……
いつも以上にオフィスに響き渡るタイピング音。周りの皆が引いているのが分かる。
でも、こうでもしなきゃ佑真さんを忘れられる気がしなかった。
それに今日はいつも以上に居心地が悪く感じる。
お局達がヒソヒソと何かを話してる姿を見る度に、あの日の出来事を噂されているんじゃないかと思うからだ。
もちろんあの事を知ってる人はここにいない。
あれは私と佑真さん、二人だけの秘密のはずだし。
だけど、今お局達にビッチだと言われても、私はもう心の中ですら言い返すことが出来ないのだ。
だって彼女達の仰る通り、私は、私は……。
「成海、今日も気合い入ってるな!いいよいいよー!この調子で頼むよ!」
頭の中はあの日の出来事でいっぱいだけど、指は休むことなくキーボードを打ち続ける。そんな私を見て、課長だけは終始ご機嫌だ。
課長の声に反応して、こちらに視線を向けるお局達。それに気付かないフリをするけど、内心ヒヤヒヤだった。
課長の好意的な態度はいつもなら気持ち悪く感じるのだけれど、今日だけはなんだか少しほっとした。
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