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「えっと、今まだ会社なんで、また連絡しますね」
溢れ出そうな感情をぐっと押し込めて、絞り出したような声で祐真さんに告げると、私は一方的に電話を切った。
心臓が煩い。
目頭が熱くなるのを感じたけど、主任の前で泣くわけにはいかないから、急いで自分の席について仕事を始めるフリをした。
我ながらよく頑張ったと思う。
あのまま電話を続けていたら、自分に負けてた。きっと彼に会いに行ったと思うし、そこにお姉ちゃんがいなかったら、恐らく……。
うん、ほんとよく頑張った。
でも、こんなに頑張ったって、誰も私を褒めてはくれない。もう愚痴を吐き出せる場所はない。
こんな生活がいつまで続くんだろう。
自業自得なんだけど、お姉ちゃんの彼氏と寝たバチが当たったんだと言われたらそれまでなんだけど。
それでも、やっぱり────
「……え?」
「…いらないならやらない」
「いや、いります。ありがとうございます」
突如、ずいっと私の視界に入ってきたのはマグカップ。微かに珈琲の香ばしい匂いがした。
慌てて振り返ると、そっぽを向きながらも、たった今給湯室で淹れてきたであろう珈琲を私に差し出す主任の姿があった。
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