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「一回俺が顔出して釘刺してやろうか」
「大丈夫ですよ。恐らくセクハラ常習犯なので、もう直らないかと。私も半ば諦めてるっていうか…」
「いや諦めんなよ」
「まぁあのバレバレのカツラを皆の前でズラしてやろうかと思うくらいには腹が立ってますけど」
「…よし俺がそのヅラ、」
「やめてください」
「このままだとエスカレートする一方だろうが」
「…主任ってもっと大人な方かと思ってました」
「あ?」
「何でもないです」
主任ってこんなキャラだったっけ。前々から主任を知っているはずなのに、こんな彼を見るのは初めてで、あまりにもイメージとかけ離れているから突っ込まずにはいられなかった。
思わず本音を漏らすと横から鋭い視線を感じたので慌てて珈琲を飲むフリをしてその視線から逃げる。
そんな私を見て、主任は小さくため息を吐いた。
「熱心なのはいいけど、あんまひとりで抱え込むなよ」
あ、ヤバい。
今優しい言葉を掛けられると涙腺が…。
「……待て、成海、」
「ず、ずみません。ずぐ止まりまずから」
「いや、うん、んー……」
次から次へと溢れ出る涙は、一度出始めるともう自力では止められない。
ならば泣いているのを悟られまいと、ハンカチを顔に覆って俯いたけどもうバレバレだった。
普段は何があっても表情を崩さない主任が、女の涙には慣れていないのか意外にも慌てていて正直驚いた。
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