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「でもなぁ…」
どうして主任はこんなに食い下がるのか。まぁ、何となくは予想してるけど。
「主任、心配し過ぎじゃないですか?」
「夜だし普通心配するだろ」
「その心配って、あれですか。私が今その辺で声掛けられたら平気でほいほいついて行きそう、みたいな」
「………それは思ってない」
「今の間はなんですか。やっぱり主任は私のこと軽い女だと思ってますよね」
「そうは言ってないだろ。ただ酔うと押しに弱いイメージはあるけど」
「その通りですよ」
「自分でも認めてんじゃねーか。だったら早く…」
「でも大丈夫です!」
「あのなぁ…」
私がいくら言っても主任は聞く耳を持たない。
私のことどれだけ軽いと思ってるんだろう。まぁ、確かに軽いけど。
営業の仕事しておきながら、こんなに押しに弱いなんて自分でも笑える。
結局主任の心配って、妹みたいな、そんな感じなんだろうな。
…やっぱりこの気持ちを主任に伝えてはいけないんだと、再認識してしまった。
もう本当にひとりになりたくて、最終手段に出ることにした。
言いたくなかったけど、あれを言うしかないみたいだ。
「主任、それより何か買って帰らないといけないんじゃないですか」
「え?………あぁ、忘れてた」
「また怒られますよ」
「電話聞こえてたのか。お前よく覚えてたな」
そりゃ覚えてますよ。相手の声までは聞こえなかったけど、目の前で楽しそうに話されたら、意識しないようにしたって聞き耳立てちゃうし、勝手に嫉妬までしちゃって、そんなの忘れられるわけないじゃん。
これからその人のところに帰るって分かってて、部屋に誘えるわけないんだよ。
「私のことはいいから、早く帰ってあげてください」
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