恋の仕方、忘れました

69/122
前へ
/188ページ
次へ
「……本当にアパートはすぐ近くなんだな?」 「はい」 「部屋についたら連絡してこいよ?」 「勿論です」 「何かあったらすぐ電話してこい」 「……はい」 珍しく頑固な私を見て、遂に主任は諦めた様子。 もしかすると、家で待ってる彼女との約束を思い出して、早く帰りたくなったのかもしれないけれど。 でもそれでもいい。 彼女を選んでくれた方が私も諦めがつくし。 シートベルトを外して「今日はご馳走さまでした」と頭を下げたあと、最後に主任の顔を見納めておこうと視線を上げる。 と、少しむくれた表情の主任と目が合った。 「暗いんだからマジで気を付けろよ。出来ればダッシュで帰れ」 「走ったら吐きそうです」 「それはキツい」 お父さんみたいな主任がおかしくてつい声を出して笑うと、主任は呆れた顔を見せた。 だめだ。話してたらやっぱり離れるのが寂しくなる。 「主任」 「ん?」 ハンドルに頬杖をつきながら私を見据える彼に、急だけど、この際ハッキリ聞いておこうと思った。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4918人が本棚に入れています
本棚に追加