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彼女ですか、とは聞けなかったけれど、それが全ての答えだと分かった。
傷付いているはずなのに、不思議とスッキリしていた。
「女性っていうか…」
「本当にありがとうございました。おやすみなさい」
主任が何か言いかけていたけど、それを遮るようににこりと笑いながら一方的にそう告げて、急いで車から降りた。
“女性っていうか、彼女だけど”なんて台詞、聞きたくなかったから。
主任の方を振り返らずに、一直線に暗い路地を進む。
とにかく早歩きで歩き続け、ひとつ角を曲がるとすぐに足を止めた。
たった今曲がった角から来た道をそっと覗くと、私が見えなくなったことを確認した主任が車を走らせ帰っていくのが見えた。
走り去る車の後ろ姿を見つめながら、この期に及んで、やっぱりもう少し一緒にいたかった。と、思ってしまった。
やっと好きな人が出来たと思えば、失恋してしまう。
こないだから失恋続きだ。
やっぱり私には結婚どころか恋愛なんて向いてないみたい。
親にはもう少し孫の顔を見るのを我慢してもらおう。
よし、今日はやけ酒だ。
主任の車が見えなくなったのを確認して、再びコンビニへ戻る。
部屋でひとり寂しく飲むお酒を買うために。
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