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「お姉さんお姉さん」
何本かお酒を買って、店を出た直後。
店の前の喫煙所で煙草を吸っていたひとりの男に声を掛けられて思わず「私ですか?」と反応してしまった。
普段ならスルー出来るのに、やっぱりお酒を飲むと正常な判断が出来ないみたい。いや、傷心中でおかしくなってたのかも。
やってしまった。と思ったけれど、もう手遅れだった。
「そうそう、君。ちょっとお話いい?」
嬉しそうにそう言いながら近付いてくるその人物を見て、かなり後悔した。
金髪に無造作ヘアー、大量のピアスに、サイズ間違えてんじゃないのってくらいダボッとした服装。
一瞬で分かる。私と違う人種。
「お姉さん、いま暇?」
「えーっと…どこかでお会いしたことがありましたっけ?」
「ううん、ないと思う。こんな美人、一度会ったら忘れるはずないもん」
恥ずかしげもなくそんな台詞を並べるチャラ男は、きっとナンパ常習犯。
少しずつ後ずさる私よりも彼が距離を詰めてくるスピードの方が速く、逃げるタイミングを失ってしまった。
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