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1章 山の国の王女
(1)
山の国を治める偉大な王、大山祇大王(オオヤマツミノオオキミ)には、二人の娘があった。
上の娘を磐長姫(イワナガヒメ)、下の娘を木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)という。
コノハナサクヤは15歳、華奢で小柄、抜けるような色白の肌をしていて、薄い色の癖のある髪と大きな瞳が印象的な少女だった。
その花のような容姿は愛らしく、出会った者全てを虜にした。大人になればどれほどの美女になるのだろうと噂の的になるほどだった。
サクヤはその可憐な姿に似合わず勝気な性格で、口も達者だった。体が小さいため力がないので許されはしなかったが、男たちについて狩に出かけたがったりもして、父を困らせていた。
一方、姉のイワナガヒメは17歳。背が高く、豊かな黒髪と健康的な肌色を持つ、これまた印象に残る美貌の持ち主だった。父譲りの剛毅さを表すような、凛とした面差しをしており、眦(まなじり)はスッと切れ上がり、陰影のはっきりした瞳は、見つめられると心の奥底まで見透かされそうな力があった。一瞬少年かと見紛う容姿だが、ほんのりと赤い柔らかそうな唇が、彼女が年頃の娘であると告げていた。
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