境界線の先

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返事は無いが、詳しい説明を待ってくれている顔だ。 「今もうちに泊まっていますけど…そういう短期的な宿泊ではなく、正式な同棲です。彼女を守ってあげるのも、駄目な所を叱ってやるのも俺の役目にしたいです。好きだからです。側に居たいです。しばらくは誰かが見守っていないと厳しい事が多いと思います」 彼女が元に戻れたら。 まずは喜んで、そして…叱ってやりたい。 「駄目でしょうか?」 「おー、いいぞ。ひとりで出歩けるようになるまでは送り迎えしろよ?」 拍子抜けだった。 そこまであっさり了承してくれるとは思っていなかった。試験監督の様にこちらを計ってくるかと思えば簡単に懐に入れてくれたりと振り回されている気にもなるが、不快感は起こさせない人だ。 「仕事は休みたくないって言うだろうからなぁ…ここでは俺が見ておく。連絡先入れとけ」 こちらが受けとる構えを見せる前に投げ寄越されたスマホ。豪快さが心地良い。 「お前友達少ないだろ」 「そうですね」 「許可する代わりの条件だ。茅香を迎えに来た時に、俺とこうやって話をする事。そうだな…週2回は必ず。それ以上になってもかまわない」 「分かりました」 「ここからはおそらく長期戦だ。してやれる事ももちろんいろいろあるが…最終的に気持ちを立て直さないといけないのは茅香自身。元に近くなるまでにかかる時間は1ヶ月かもしれないし、半年かもしれない、1年、3年…もしかしたら、一生だ。お前が潰れんなよ?」 この人…良い人だな。条件だって俺の為。ひとりで抱えて潰れてしまわないように、ガス抜きしていけという事だろう。
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