境界線の先

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「年末年始忙しいんだってな?木田が去年喚いてた。どうするつもりだ?」 背負う気持ちがあるのに、一時的な安らぎを求めていては駄目だ。これから一生を共にするのなら、長い目で見てお互いの為になる事をしていかなければ。 今は辛い選択でも。 「今年は実家には帰らないつもりでした。でもやっぱり、今まで通り忙しない年末年始を送ろうと思います。彼女が立ち直れた時にすぐ迎え入れてやれるように…背負う準備を整える為に、今年も実家に泊まり込んできます。そこでお願いが」 「許可してほしい事にお願い事か」 「彼女が立ち直れたら、結婚を申し込みます」 「断られる可能性もあるよな?」 「もちろん。でも自信はあります。逃がしません。俺には絶対に彼女です。ズルくても先にあなたと、露利の家と両方を固めます」 「お願いってのは結婚させてください、か?」 「いえ。結婚するまで、俺が近くに居てあげられない期間…まあ、ほぼ年末年始だけです、悠一郎さんに彼女を見ていてもらうわけにはいきませんか。会えるのが2秒でも10秒でも1分でも3分でも、今年も来年も3年後も5年後の年末も、彼女が元に戻るまでその期間は何があっても何処にでも毎日通います」 とんでもないお願いなのは、承知の上。でもなりふりかまっていられない。準備は最短で。そしてそこからは抜かりがないように詰めていく『待ち』の時間だ。だって彼女が立ち直るのには一生かかるかもしれないけど…突然明日、なんて事もあるかもしれない。それは誰にも分からないから。 「っ、ははははっ!」 腹を抱えて笑う顔は、これまでと比べて更に幼い。笑われようがかまわない。本気だ。 「あなた以上に適任はいません。無自覚ですがモテるので他の男には任せたくないです。任せられるほどの女性の知り合いは…いないと思うんですが」 友達に頼るには彼女の状態を考えると難しい。母親がいれば頼っただろうけど、その人はもういない。となると無条件に見守ってくれる最適は目の前の人物。加えてそういうのが上手そうだ。 「俺を使うって事か。やるねぇ」 不適に笑った。
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