あおはあかになり、紫に背中を押される

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息切れしながら廊下を奥へ、奥へ。 けれど入りたかった部屋までは辿り着くどころか扉を見ることすら叶わず体が崩れる。床に横たわった体をどう動かしていいのか分からない。苦しさが通りすぎるのをひたすら待つしか、なくなってしまう。 いつも通り送ってくれた彼と別れ社内に入った直後。見知らぬ男性とぶつかりかけた。 「あ、すみません!」 撮影の関係者だと思う。ほんの少し触れただけの為にその一言の後すぐ去っていった…かなり背の高い、男性。 まずい。 異常な動悸を感じ、そのまま社長室の方へ進んだ。そして途中で崩れた体。その視界に黒い足が入る。 「あと…半年程で期限ですよ?」 期限。何の話だっけ。重大な事なのは分かるのに内容がはっきりと出てこない。でも木田さんの近くには、いない方がいいのは良く分かる。 「こ…だい……」 苦しむ様子をじっと眺めていた体が動き、死にかけの虫程にしか動けない体を抱き起こされた。その力の差をきっかけに、視界は一瞬で、あの日。 荒い呼吸が治らないまま震えが足される。 「やぁぁっ、やめっ、お願い!葵!」 「違う男の名前ばかり呼んで」 自らの呼吸音で聴覚がうまく機能せず、何と言っているのかは分からない。でも苦しそうな声がする。過去へ飛んでしまった意識が戻ってこられない。 全部全部、私のせい。 みんな私が、傷つけてるんだ。 葵も、颯も、木田さんも、紅大も。 「ごめっ……なさ、い………!!」 「あなたが謝る必要なんて、どこにもないのに」 苦しい呼吸と、震えに、止まらない涙。 しばらく続いて意識が切れた。 社長室の隣の部屋。何度もお世話になったソファで目が覚めると思っていた。 違う。ベッドだ。 視線だけで様子をうかがうと、電気がついていない部屋の扉は開けられていて、その分だけ光が筋のように室内を走っている。 ここには小さい頃に何度か入った事がある。 煙草の匂いの残るベッド。 「どうして、木田さんの家にいるの?!」 掛けられていた布団が起こした体の勢いに負けて落ち、現れた自分の姿は上下共、下着しか身につけていない状態だった。
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