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赤い栞をつけた彼女
「それでね、その露利紅大って奴なんだけど、見た目がさ~控えめに言ってもイケメンなの。多香子惚れちゃうかもよ?イケメンの中のイケメン、トップ・オブ・イケメーンなんだから」
「それは…ちょっとバカにしてない?」
「バレた?」
高校からの悪友なんだよ、と颯が舌を出して笑った。
地域でも1番大きな図書館のリーフレットの作成の為に訪れた、撮影の初日。
私と同じくモデルとして働く那古颯の友人の『トップ・オブ・イケメーン』が勤めているらしい。
恐ろしい数の蔵書を抱えるここは学校に資料をまとめて貸し出したり、クラス単位で生徒が調べものに訪れたりと建物と同じで規模が大きい。
もちろん一般の使用も可能だそうだ。
通常の開館時間に撮影をする為、来館者の邪魔にならないよう1回にかけられる時間は僅か。短時間の撮影を何日も繰り返し、完成するのは1か月後の予定だ。
「あ、露利いた。やっほー」
職員さんに館内の案内をしてもらっていると、颯が階段を登りかけていた男の人に声をかけた。
振り返った男性は颯の言った通り、恐ろしく容姿の整った人だった。
なんて表現すればいいんだろう。
『トップ・オブ・イケメーン』
それはそれで納得だけど、周りの空気までも整っているとは思わなかった。
長めの前髪から覗く涼しげな目元、通った鼻筋。長身に無駄のない体躯。
もちろん颯だって格好いいと思うけど、この人と並ぶと少し霞んで見える気がする。
…本人には伝えないでおこう。
「那古?あぁ、今日から撮影か」
「そ。しばらくよろしく」
「ん。よろしく」
「で!で、で、で!こっちが噂の片深多香子だよ。可愛いでしょー?」
噂?
紹介されたので一応頭を下げたが、じろりと一瞥されただけだった。
性格はイケメンじゃないのかも。
「仕事あるから」
「はいはーい、またねー」
そのまま奥へ消えてしまった。
「颯、噂って?」
「気にしないで。ほら打ち合わせ始まるよ」
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