それぞれの燃え方

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「葵にも…お父さんからオトシマエ、つける?」 内容はともかく盛り上がっていた様子から一変、用事の済んだ箸を丁寧に箸置きに戻しながら、正面に座る父に問いかけた彼女は不安そうだ。 詳細を知らないとはいえ、クソ餓鬼に『もういっそ殺してくれ』と泣きつかれるまで後悔させるだけの力も持っているだろう。その報復に、文句のつけようのない父親という立場だってある。 木田さんがつけられたというオトシマエについても彼女から聞いていた。家は荒れ放題、テーブルは真っ二つ。彼自身も髪を掴んで引きずりまわされ、血だって当然のように流れていた、と。 彼の家から出る時に声をかけたかったが、悠一郎さんに止められたのだと心配していた。 今朝会社で顔を会わせたときは何事もなかったかのように接してきてくれたが、額にあった擦り傷が痛々しかったそうだ…って、なんで奴の態度が普段通りで喜んでるんだ。 何事どころか脱がされて閉じ込められてる。『ショック療法なの!』だとか彼女は言い、気にしていないがやった事はクソ餓鬼とそう変わらない。ほっとけそんな奴。 腹立たしいが悠一郎さんにそこまでオトシマエをつけてもらっている事で、なんとか溜飲は下がっていた。 「しねぇよ」 「本当?」 「色男が俺の分まで殴ったみたいだからな」 ちらりとこちらを伺われる。 2発で許すというのか。 自分には到達できない考えだ。 「本人も分かってるようだしそれでいい。仕事だって希望したタイミングで復帰させてやる」 良かった、と俯きがちに安堵のため息を溢すと食器を下げ、洗い物を始めにテーブルから離れていった。 自分も木田さんが受けたオトシマエぐらいクソ餓鬼にしてやれば良かった。颯に止められただろうけど。 「それでね、私ちゃんとモデルの仕事しようと思って。今までの…中途半端な働き方じゃなくて」 以前までのかなり限定していた被写体の仕事を、ちゃんとやるという事だろう。おそらくクソ餓鬼を待ちたいのだ。いつかまた共に撮影が出来る日が来るのを。 奴が関わっている事は腹立たしいし、モデルとして露出すればそれなりに心配もあるし嫉妬もある。 そんな気持ち全て、彼女にはきちんと打ち明けておこうと思う。 「おー。いいんじゃね?色男もどうだ?」 「図書館のリーフレットを新しくする事があればその時限定で。且つ多香子と一緒にということであればお受けします」 「颯と3人で?素敵!」 「なんでだよ、2人でだ」
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