それぞれの燃え方

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やたら曲線を強調したトルソーが並ぶランジェリーショップに、悠一郎さんが迷いなく『入るぞ』と言い出した時は耳を疑った。 さすが、どんな場所にも抵抗なく切り込めるタイプらしい。自分にも抵抗はないが、2人の時ならまだしも恋人の父親と入って楽しめる気がしない。近くのソファで座って待つ事にした。 「なんだ、選んでやらないのか」 「どんな下着か想像する方が燃えるので」 脱がす時、上は大抵つけていないタイミングで始まるから想像するもなにもすぐ地肌だが、下着姿は趣味嗜好で言えば好きな方だ。 同棲を始めてもまだまだ恥じらいを忘れていない彼女は、着替えのタイミングを計る事に余念がない。敢えて見ようとした事もないが、いつもいつの間にか仕度が整っている。 「もしかして茅香子さんには選んであげてたんですか?」 「誕生日プレゼントに毎年あげてたんだよ、この人」 「最初は茅香子から欲しいって言ってきたんだ」 「嘘だぁ」 「『実用性が無くていいわね』って喜んでたから毎年やった」 「それは喜んでたんですか?」 「実用性が必要じゃない場面で喜んでた」 「そういうの娘の前でやめてくれない?」 「よし、茅香。行くぞ」 「なんで父親とこういうお店に入らないといけないの?!」 そして腰、いや尻に沿わる手で無理矢理に連れ込まれていった。 30分程で戻ってくると『この人私のサイズ知ってたの!なんで!』と喚いていたがそれは朝触ったからだ。職業的に悟いのかもしれない。 「そりゃあ父親なんだから当然だろ」 きっと知らない父親の方が普通です。
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