ふたりの愛し合い方

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ふたりの愛し合い方

もう一度目覚めると、既にお昼が近いような時間だった。 慌ててリビングへ駆ける。 いかにも寝起きな自分とは対照的な、すっかり支度の整った今日の主役が、ソファに座っていた。 「おはよう。大丈夫?」 「ごめんなさい!いつから起きてたの?」 「普段と同じくらい」 3時間も前だ。 気にするな、と言われても不思議でしょうがない。明け方に一度動悸と共に目覚めてしまった自分に付き合って、起きていてくれたはずなのに。いつの間にか再び眠り、空腹の目覚まし音に気づくまで熟睡だった事が申し訳なく情けない。 「…誕生日、おめでと」 「夜も聞いたよ。ありがとう」 始めての時みたいにめちゃくちゃ抱かれるのかな、と日付が変わる頃に紅潮していた頬。 期待とは違い、服越しにあたため合うベッドの中で返事と共に唯一もらったキスを思い出し、また熱くなりそうになったけど慌てて冷ます。 今日はそんな欲の火は消して、健全に祝ってあげよう。 「すぐ着替えるんだったら、脱ぎやすくて着やすい服でお願い」 紅い火は、消さなくてもいいのかも? リクエスト通り、スカートと丸首のニットに着替え終われば、ソファで髪を整えられ始めてしまう。誕生日なのは一体どちらなのか。 どんな風にしようかな、と力のある手ぐしが後ろで悩む振りをしているけど、座った瞬間から既に予想はついている。 例えば出勤前。 首を晒すように自分でアレンジすると、なんやかんやと理由をつけて側に呼ばれ、手直しと称して隠されてしまうのに気づいた時はいつ頃だったか。 からう事も出来ない。こんなどこにでもある首ひとつ、そこまで愛してくれなくてもと照れ臭かった。内心喜んでしまっている自分に苦笑したい。 モデルの仕事をきちんとする、と父に伝えた後。全ての気持ちを聞いておいて欲しいとさらけ出してくれた時も、同じ気持ちを抱えた。 『本音は嫌だけど。考えて決めたんなら…応援はする』 『ありがとう!』 『どんな撮影するか決まったら逐一教えて』 やけに力の入っていた眉間。 『印つけとくから。見える所に』 『…教えるものかっ』 飛び抜けて容姿が整っているわけでもない。中身だって年齢に見合う程落ち着いてもいない。それでもそんな風に独占しようとしてくれるなんて。 「完成。いい出来」 機嫌の良い声に、鏡を覗く。 ふたりで出かけるときだけ許される、晒された首。遮る髪の毛は、ただの1本も許されていなかった。
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