ふたりの愛し合い方

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「え、何?怖い」 「俺ならこんな男は選ばない」 考えてみろ、とこちらの相槌も許さない勢いで続く。 「露利に入るのは大変だぞ?これから親戚、関係者、それぞれがどんな関係でどんな物が好きで…100人分は超える相関図を丸暗記。茶道はもちろん茶会の作法だろ?着物も自分で着ないといけないし…もちろん守れる所は守るけど、色んな視線にも晒される。ま、1年かかって全体がやっと分かってくる感じかな。頑張ろうな」 「ひゃく…?ちょっと、待っ」 「勉強したいんだろ?」 「ちょうどいいって、露利家の事情?!」 「俺は離れない。一緒にいるんだから平気だな?」 「正直そこまで考えて返事したわけじゃないと言いますか」 「平気だな?」 「…………頑張ります」 「よし。これで俺、死なない」 「死ぬ所だったの?!」 「これでも緊張してたんだ」 そんな命懸けのプロポーズだったとは。 「もう隠し事は絶対するな。木田さんの件は悠一郎さんから聞いた」 「ごめんなさい。それももうオトシマエ、ついたよ」 「いや。あれにはもっとちゃんと区切りをつけてもらう」 いつの間にやら陽紫が『あれ』呼ばわりになっている。オトシマエの日に名前を呼び始めた事で火がついたみたいだけど彼も家族だ、仲良くして欲しい。 「これからは悩みもちゃんと教えて。夫婦になるんだから」 「あんな風な聞き出し方はもうしないでくれるんだったら、隠し事はしないよ」 「…悪かった」 幸福も絶頂だった所で、こちらからもお願いを告いだ。 直後は『ねだっていいよ』の一言しか覚えていなかった。過去を巡る意識の中、体に残る記憶を見つけてしまった。もう忘れておいた方が良かったぐらいの…恥ずかしさだった。 「いや、待てよ。あれはそもそもお前が」 「聞こえなーい」 抱え上げられ、そのまま館内を巡る。 いつも使っていたテーブル、中庭。 この間無駄に回った所なんだけどと、ため息が聞こえたけど、嫌ではなさそうな顔をしているのはすぐ分かった。 「そろそろ連れていきたい所に付き合ってもらおうかな」 「ここじゃなかったの?」 「ここで脱ぐつもりだったのか?」 「なぜ脱ぐ話になるの!」
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