ふたりの愛し合い方

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和服を着こなしているという表現がぴたりとハマる動きで、腰を下ろす。 「こんにちは。露利弥栄(やさか)です」 「片深多香子と申します」 「いやぁ、貴雪と紅大が妙に結託してあなたを露利に入れたいと言うからどんな子かと思っていたら」 紅大と視線が合ったのかと思った。彼も弥栄さんの年齢になる頃には、こんな雰囲気になっているのだろうか。 「予想と少し違ったかな、良い意味で。頑張ってね」 「はいっ、ありがとうございます」 「ほんと、この次男は大事な集まりの時でも勝手にいなくなったり…手を焼いた。あなたと出会ってえらく変わったみたい」 「去年なんか滅多に近寄らない私達の部屋にまで来て、話を聞けって。あなたとの事、枕元でもずっと話続けるのよ?やっと眠れたと思ったら、夢まで息子のナレーションになって」 「ゆっくり話す時間が無いなら睡眠学習だ、って兄貴が」 「貴雪は面白がってただけよ」 あ、そうだ!と弥栄さんが1度手を打った。 「これからすぐ家を出ないといけなくなったんだった。だから、沙織さん」 目配せで通じ合う、お似合いのふたり。自分も沙織さんの年齢になる頃にはこんな風な女性になっていたい。 羨望を持って眺めていると、同時にふたりからの真剣な視線とかち合う。 一体何が始まるのかと固唾を飲んだ。 ふたりが正座のまま座布団から後方へ滑り降り、直に畳へ。そして深く、私に向かって頭を下げた。 「「紅大を変えてくださって、ありがとうございます」」 家柄も年齢も人生経験も自分を遥かに上回るふたりの、揃い、整いすぎた土下座に近い礼に、反応が遅れてしまった。 「私は、何も!頭を上げていただかないとどうして良いか分かりません!」 「やめて。困ってる」 「来てくれた日にふたりで言おうって決めてたんだ、驚かせてごめんね。じゃ、あとは沙織さんに遊ばれてください」 「遊ばれる…?」 では失礼。と颯爽と部屋から去る弥栄さんに続いて沙織さんも姿を消した。遊ばれ方を隣に確認する前に、なんの音も立てず戻ってきた沙織さんが、襖の隙間からちょいちょい、と手招き。 「それじゃあ多香子さん。ちょっといらっしゃいな」 「健闘を祈る」 指輪にキスをしてから振ってくれた手に、昨晩の勝手な頬の火照りを思い出した。
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