ふたりの愛し合い方

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また突然入ってくるのかなと、溜まったお湯に息を吹き掛け続ける。 来そうにない。 なぁんだ、来ないのか。 誕生日だから一緒に、と言ってくるんじゃないかと警戒し、体を素早く洗って湯船につかった自分になんと声をかけていいか分からず膝を抱く。 疲れただろうし今日じゃなくたって…これから沢山、機会はある。まだ立ち直ったばかり。あの日からそういう事は1度もないけど、きっと無理しないように私の事を考えてしないんだよ。落ち込むのは失礼。受け入れよう。 邪な気持ちはお湯に預けて浴室を出る。 ドライヤーもきちんと、いつもの場所で働く機会を待ってくれているのが見えた。彼に髪を触ってもらうのはとても好きな時間のひとつ。大きな手が絶妙な力加減でマッサージをしてくれている気分になる。 初めて泊まった時みたいに、してくれると思っていた。 今日エッチしないのかな。 いやいやいや別にしたいとか、そんな。 もう1年近く同棲していたとはいえ、その事実をやっと噛み締め始めて1週間。 まだまだ、雲の上で跳ねられそうな気分だ。 誕生日だからって言って、ズルいセリフを吐きながらいろいろしてくれても…許したのに。 熱を逃がすような息を吐いた所で、自分で用意しておいた下着とパジャマが消えている事に気がついた。代わりに置かれていた薄い布を不思議に思い、つまんでみる。 それはいろいろする気まんまんの…ベビードールとセットのTバック。 すぐ湯船に浮かべた忘れ物を取りに戻った。 上着を羽織り、暗いリビングの様子を伺う。 物音ひとつしない。カーテン越しに薄明かりが見えていた。リビングのライトは消えているけど真っ暗ではない。 オレンジ色の優しい光。 上着は腰までしかなく、丸出しの足でそっと近づいたカーテンの向こうに耳を澄ます。やっぱり物音はしない。 小さな寝息が聞こえていた。 それはそうか、疲れたよね。 緊張したって言ってたし。 ベッドでは顎まできっちり布団をかけた彼が、無防備な頬を枕に預けていた。 「おやすみなさい。私の紅大」 こめかみに軽いキスをして、微笑ましく寝顔を見つめた後自分の姿を思い出しため息をひとつ。 健全な寝息に背を向けて、いつものパジャマを着るために上着を脱いだ。 「Tバックって今まではいたことあった?」 「初めてはいたよ。落ち着かない」 「そんなパジャマは?」 「憧れはあったけど初めて着たかな」 「初めてを沢山ありがとう」 「…あれ?どうして…きゃあ?!」 腕を引かれ倒れこんだベッド。組み敷いてくるのはもちろんいろいろする気まんまんの素肌の彼だ。 「タヌキ寝入り?!」 「誕生日プレゼント遅いな、と思ってたら仮眠してた。お姫様からのキスで起きたけど」 「私がプレゼント的な事は毎年やらされるの?」 「大歓迎です」 「そんな真面目な顔で…」
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