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何回ご所望なんだろう。
望むだけ応えてあげたい。したい、と思ってしまうのは、罪悪感を持ちながらも受け入れすぎと言われる自分の性質故なのか。
「いいのかな…」
「良いことも悪いことも、遠慮せず伝えるって俺は決めた。だからいいよ。相手が俺になら…なんでも」
「でも、」
「こんな格好しておいて今さら何を」
嘲るような言葉には似合わない綻んだ顔が近すぎる。まったく、心臓に悪い顔だ。
「着るようにされてたぁっ…あ!」
「片手じゃ足りないくらいしたい」
離れない視線を受けながら、荒まる籠った息がベッドを包む。火花が散ったような視界に、腰が跳ねた。
「教えてくれてないのに」
「っ、あ…ごめ…久しぶり、で…」
咎める表情に、中も外も征服されていく。
彼に落ちていく音が、足の間から止んでくれない。幸福で舞い上がりそうなのに、落ちる。
もう落ちつくしていたと思っていた。
それでもまだ落とされる。
「本当は日にちをかけて1回ずつ増やしていく予定だったんだけど」
「あ…じゃあ」
「悠一郎さんがこんなプレゼント寄越すから」
「あの父親っ!」
本当にろくなことしない!!
「興奮してるし、久々だし、エロいし、誕生日だし」
「エロいって、服が、でしょ?」
「婚約者は昨日の夜からずっと物欲しそうな顔してるし」
婚約者。その単語に顔と、辛うじて残っていた体の強ばりがだらしなくゆるむ。
「とりあえずこのまま1回」
袋が開封される音の3秒後。
もう機能を果たしていないTバックは割れ目からずらされただけ。性急に捕らえられる最奥。
手は抜かりなく繋がっていた。
「脱がないの?!」
「…味わいたいし…っ」
この前は動かなくても幸せと言っていたのに、力強い味わい方に何度も反応を確かめられる。音も声も荒い呼吸もぐちゃぐちゃに目の前の空気に混ざって、甘い。…甘いわけないのに、やっぱり味わいたくなって大きく吸い込んだ。
「やめたかったら『大嫌い』か『結婚するのやめる』って言って、教えて?」
「ズルい!ズルいズルいズル、いぃっ、!」
そんなの言えるわけないっ。
「やっと俺だけのものになるんだ…」
「もぉ、…っ、とっくに、紅大のものだよっ」
奪い合った呼吸は、口内ではひどく甘かった。
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