奪い愛、奪われ愛

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偶然だった。 自然と鼻歌でも始めてしまいそうな教会へ向かう道、まだ街中。信号にひっかかる車の間を抜け、停止線までつけたバイク。 真横の助手席から視線を感じた。 茅香だ。窓に額をつけ、枠にかかる指がこっそりと揺れている。 嫌でも運転席が視界に入る。ハンドルを握り潰す前にUターンした。 1週間は教会に近づけなかった。 暴走の果て、意味もなく時間が流れる集会の中、夜空を見上げる。珍しい色の月があった。 今何してんだろ。 まだ教会か。もう家か。 家なら、殴られてねぇかな。 蹴られてねぇかな。 キスとかセックスも、最低旦那とすんのかな。 最悪。 「なぁ、好きってどんな感じ?」 チーム内で恋人が出来たという男に思わず聞くと『どうしたんすか』と笑いながら答えてくれた。 「会えない時に、誰と何してるか考えてる感じっすね!」 茅香。そこにずっと居て、幸せ? 俺だったらもっと幸せな所に連れて行ってやれるけど。 その日の月に、ウサギはいなかった。
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