奪い愛、奪われ愛

11/19
前へ
/369ページ
次へ
「舐めながら捏ねて撫でて弾いて擦りあげて…、…んっ…!」 恥ずかしげもなく開かれた膝の中、教わった通りに触れる芯は淫らに濡れ、腰は踊る。 最奥を突ける激しさを前に、武者震いが駆け抜けた。 「指は1本ずつ。あ…っ、こ、ら…ちゃんと、聞きなさ、い…」 「余裕ありそうだったから」 「生意気」 「茅香がこうさせるんだ」 「イイ所を…探してあげてね。私のはここ」 浮いた腰。忘れない。 覚えるのは、生涯この体のそこだけ。 「責め立てて」 方法は聞かなくても分かった。 欲に導かれる熱量に比べて、室内は吐息しかないなと、冷静な耳が気がついた。 もっと喧しいものじゃないのか。 「…んっ…、っ、静かだと…思っ、てる?」 「おお…まあ」 「嫌な事や痛い事は声を出さずにいた方が早く終わるし萎えて終わってくれる事もあるからいつもこうよ」 「他の男の事口にすんじゃねぇ」 冷めた目で、刺された現実。冷静さを嫉妬に殴られ、喧嘩の最中よりも獰猛な声が喉を通る。 「もっと興奮するような、大きくて甘えた声を沢山聞かせてくれる日が楽しみね」 「生憎デカい音は聞き飽きてる」 「処女かしら」 「違う」 「もっとじっくり解してあげてね。傷なのよ。終わった後も痛いんだから」 「他の女の事も口にすんじゃねぇ!お前も俺の事」 「さあ、好きに責めてイかせてみて?」 「聞けよ…っ!」 背伸びをしたときに出るような鼻にかかった声を出しながら、間もなく痙攣を見届けた。薄い光に照らされる表情が女神に見えた。 無理矢理指輪を奪い、見せつけるように床に落とす。転がりもしなかったのが分かる音。ベッドのすぐ下にあるはずだ。困ることはない。 鼻先触れさせた顔面がそれるたび、顎を掴んで戻す。すがりついてくる寂しがり屋の奥に、再び欲がたどり着いた。 「愛してる」 顎を掴む手に力を入れてもそれる黒目を追い、捉えたまま。 『愛してる』と伝えるタイミングは、中に入れて見つめ合いながらだと、教わったから。 「茅香。好きだ。愛してる」 「そう」 「喜ばねぇじゃねぇか。嘘教えんなよ…」 今日が最後かもしれない。 しつこいほどそれる顔を執拗に正面に戻し、シーツに固定するよう睨み付けた。 抱き締めても1度も返ってくる事はなかった、長い奪い合いの終わり。出し尽くし、倒れこんだ頭を労るように撫でて諭される。 「年が近くて、痣なんか無くて、イイ声で鳴いてくれる、素敵な…独身の女性とたくさんシて」 年が離れててもいい。 肌が痣だらけでもいい。 イイ声を沢山聞かせてくれなくていい。 今は既婚でも、独身に戻ってくれたらいい。 空想の結婚相手なんか勝手に作んな。 「幸せになって」 「茅香は俺と結婚して、新しい痣なんか出来ない、自由な時間を過ごして…ガキを、産むんだ…お前に似た、女の子…」 「それはとっても…幸せね」 鼻にかかった言葉を脳が理解する前に、初めて迎えた夜の疲労に落ちる。小さな体の上に倒れ込んだ、そのまま。 「茅香がいないと生きていけない…」 ほぼ無くした意識の中、なんとか必死に抱き込んでも、抱き返してはくれなかった。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

185人が本棚に入れています
本棚に追加