185人が本棚に入れています
本棚に追加
父と母から、男と女に変わる深夜。
「っ…あ、ぅ…んぁ…」
素肌を滑って膝を抱え上げ、何もつけていない先で惚けた入り口をくすぐった。
初めての時より聞かせてくれるようになった、エンジンをふかしてくれる声がひっそり耳元で響く。
「もうひとり欲しい。男」
「悠一郎に、そっくりな子?」
「そっくりじゃない方がいい」
「そう」
冷静な返事に、そのまま突っ込んでやろうとアクセルを回す手に力を入れた。
「その子か、私か。どっちにする?」
急ブレーキ。
止まらざるを得なかった。呼吸まで止まった。からかいではないことは重ねた年月、言い方ですぐ分かる。
「どういう事だ」
「年齢もあるけど…骨が」
痣はとっくに消えていた。茅香の性格だからこそなのか後遺症は内面にはなく、足ぐらい。ところが本人しか知らないものがまだあった。
「骨盤と足の付け根が歪んでいるから、止められてるの。子どもも私も危ないって」
「言えよ!」
「多香子の時に言われたのよ?言ったら、諦めたでしょう」
「そりゃ、お前…!」
「悠一郎の望みを…私も叶えてあげたかったの」
妊娠中も出産の時も、頑なに病院には来るなと言われていた。
気持ちが追い付かずベッドに沈み、茅香を腹に乗せた。
「別にセックスは問題ないのよ?」
「言えよ」
「ごめん」
胸板にしなだれ寄り添われても、指がくすぐるように撫でてきても力は入らず。
心音を確かめるようにぴたりと張り付かれると、彼女の言葉は耳にも体にも直接的響いてくる。
「茅にもね?花言葉があるんだって。教会でそんな本があったの」
続いた言葉は、らしくなく震えていた。
「子どもの守護神。多香子にとって私、そうなれるかしら」
「どうだろうな」
「花言葉はもうひとつ…あ、それは悠一郎が泣いちゃうから自分で調べて?私早死にするから」
「その妙な自信はどこから来るんだよ。死ぬな」
そんな風に『茅』について話した事もぶっ飛ぶ出来事はすぐ起こった。
根拠のない自信は、現実になる。
最初のコメントを投稿しよう!