もうすぐ、

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就寝できる姿で戻ってきた時には、自分も支度を整え布団に潜り込んでいた。 1日の終わりを迎えた暗闇。肩口におさまった頭を撫でると漂う、甘い空気。 シーツを滑らなくても感じる柔らかさと、鼻につく香りに誘われた手が、『2度あることは3度ある』という迷信の証明に張り切り、待ちわびた肌を勝手する。 「明日早いんだよね?」 「6時には出たい」 「しないよ?」 「ひとりで待ってたご褒美に」 「今日と明日はしなっ…ぃ、…ってば!」 「さっきのお返しと、明後日の分」 「昨日散々したもん」 「したっけ?」 「うそ、忘れちゃったの?」 「あ、思い出した。誰かが物足りない顔するから1回増え…痛っ!」 みぞおちに打撃。 非力で響いてはいないが、身構えもなく食らった場所には、落ち着いたとはいえまだ大盛1人前ほどパスタが残っている。危なかった。 みぞおち、喉仏、顎、こめかみ。 最近増えた可愛らしくつつかれる場所は、すべて急所であることに思い当たる。 蹴りあげるのも他の急所をつくのも、見知らぬ男だけに披露してほしい。可愛らしい内はいいが、感情に任せて力を込められでもすれば相応なダメージはある。 妙な知識を吹き込んだはずのタレ目が頭の中で笑った気がしたが、触れる柔らかさにかき消えた。
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