番外編 1

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素肌まで上質な彼を見上げ、動きに合わせ浮き沈みする肩ごしに、毎回教訓を確認している。 「どこから…欲はたくさん、湧いてくるんだろう…?」 「ここの、奥から」 「ちがっ…そういう意味じゃな、ぃ、あっ!」 慌ただしかった1回目とは違ったゆるい律動は、知りつくされ飽きられないのかと心配になる行き止まりへ。 さらに奥を目指す、突き破られやしないか冷や汗が出るほど追い詰めてくる甘いノックに呼吸を忘れかけ、酸素を求めて開いた口は塞がれる。 苦しさの中味わう、彼の匂いで強引に思い出すことになる、呼吸の仕方。 溺れてしまいそう。 与えられる熱い愛情に溶かされ、沈む。 「…こぉだぃ…なか、あつぃ……」 「っ!…悦びすぎ…っ」 こちらの細かい震えが与えた衝動を逃がすような長いため息と、ふっと視線をそらす仕草から目が離せない。 浮き出た首筋に、時間をかけて上下した喉仏。 暗闇でも輝いて見える、そんなところにまで魅力を感じている。 温度の高い吐息にまで心臓が騒ぐ。 どうか。姿の見えない息にまで煽られた動悸が、バレていませんように。 ぴたりと触れあった胸に願う。 「綺麗…」 「急になに」 「喉仏が」 「取り外そうか?」 「え?取れるの?」 「いや、取れるわけないだろ」 「どうして信じちゃったんだろう…」 真面目な顔して言うから、もしかしたらと思った自分の騙されやすさが悲しい。
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