番外編 1

5/66
前へ
/369ページ
次へ
外では見たことのない、誰にも見せたくもない濡れ光る細まった目に、自分はどんな風に映っているのだろう。 情事からそれた会話に、体も頭も状況を忘れてしまった間抜けな顔があるだけか。 その腑抜けた一瞬も、見逃してはくれない。 お腹から顎まで、くすぐるようにまっすぐ舐め撫でてきた舌先は、目の前で『甘い』と呟いた。 「分かってるよな?これで終われるわけないって」 「あっ?!待っ、あした、撮影っ!、たくさんは…っ、ね?おね、がい…っ!」 前菜の余韻を楽しみながらも、ここまでくればメインディッシュへの助走と言える。 弱い部分にだけゆっくり与えられる刺激に、鼻から抜ける声が高い。 体の内、点のような一部分から全体へ侵食してくる快感が生む、湿ったふたりの大人の甘味。 メインディッシュは旨味艶めくハンバーグ? デザートも同時に運ばれてくるのかも。 やたら波打つシーツのテーブルクロス上、閉店後のディナーに限り。 「朝…動けなくなってたら、休む?」 「やすまな、いぃっ!…ゃ、あっ!」 「休む?」 「やだっ…めいわく、かかる…は、」 颯にも、と言いかけてギリギリで耐えた。最中に男性の名前を出すのがよろしくないことは、いい加減分からされてきた。 ただでさえ明日の撮影内容に不満を持たれているのだから、しでかしてしまった場合は本当に動けなくなるまで続きそうだ。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

185人が本棚に入れています
本棚に追加