番外編 1

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空気と、抵抗する力を奪われながら素肌をもて遊ばれているうちに、脇の辺りでだんごみたいになっていたパジャマ。 邪魔そうに滑り落とす音を耳が拾ったときは嘲笑いたくなった。 本気で抵抗しきれていない自分を。 「1カ所くらいつけておこうか」 「き、着替えるとき、思い出しちゃ…ぁ!」 「その方がいいんだけど」 「おねがぃ…っ!」 「…分かってるよ」 いじわるしながらも、優しい選択をしてくれるのも知っている。 でも、よそ見する素振りをみせようものなら本音の欲を押しつけられてしまう。 彼のことしかないような頭のなか、針の先ほどしか残っていない真っ当な思考を使い、言葉選びは慎重に…出来てた? 上手くごまかせた、はず。 「どこからたくさん欲が湧いてくるか…知りたい?」 この先の展開もまた、知っている。 弱い抵抗を吸いとるようなキスに魅せられ、荒い呼吸で激しい律動を待ちわびている体。 たっぷりと吸い上げた養分に満足げな、光るように花開く百合の笑みを目の前に、逆立つ期待が背中をかけあがる。 「知り、たい」 触れられていないところは爪の先ほどもないのではないかと思えるほど、くまなく教わった。 中。皮膚。髪。声。吐息。そこかしこ。 自分の全てから、彼の欲を煽るものが湯水のように湧き出ているらしい。 要するに、そばにいる以上はどれだけあがいても、愛情表現はおさまらないということだ。
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