番外編 1

8/66
前へ
/369ページ
次へ
彼の中に入って、知りたい。 いっぱい欲しいと、間違っても言えない夜。なのに1回じゃ足りないいやらしい自分を、どんな気持ちで見下ろしているのか。 口先だけの『1回だけ』 本心ではないことはお互い分かっているのに、わざわざ遠回りして煽りあっているのだからどうしようもない。 「あと、1回、だ、け…」 「1回だけじゃ教え尽くせない」 こちらの嘘ぶく口先なんか、いともたやすく見破られて溺れてしまう。 デザートはアフォガード。 注ぎ込まれるは、湯気たちのぼるブラックなコーヒー。熱い愛情をたっぷりと注がれたバニラアイスは、やわくとろける。 熱さと冷たさ 苦味と甘味 全てを巻き込んで混ざり合うふたりが、ひとつのデザートを夢中で食べさせあう。 無粋な口先には唇で蓋を。 濃密なディナーに、テーブルマナーなどというものは…ただのひとつも存在していない。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

185人が本棚に入れています
本棚に追加