番外編 1

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帰ったらとにかく甘えさせてあげるからと、扉すら不機嫌そうに見える玄関から離れつつ、こんなやりとりも愛しくて足取りがはやる。 夜のうちに雨が降ったらしい。 雨上がりの澄んだ空気とは反対の、こもった吐息を思い出して、頭を振る。 まだもの足りなさそうだった体に包まれ、眠ってしまった後に雨は降ったということにしよう。 乾ききっていない地面に朝日がさす眩しさに、よこしまな気持ちは浄化された。 白いスニーカーに襲いかかる細かい砂。 気になるどころか、新しい世界への第一歩のような1日のはじまりに、気持ちはあがり続けている。
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