番外編 1

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一生懸命食べて、話してくれる颯の口。 鼻唄のリズムに合わせて揺れていた体を止めてくれたところで、口元についた衣をとってあげた。 見開かれた颯の目を見つめている間に再び連続のシャッター音。 「可愛い」 「いいなぁ、紅大は。毎日こんなキミを見てるのか」 恋人とふたり、家で過ごす休日の設定。 ショートパンツのルームウェアに、襟元に余裕のあるシンプルなシャツからは鎖骨がゆったり覗く。 髪型は颯とおそろいになった。 ヘアメイクの時点では私だけ、前髪がゆるく結ばれていた。それを見た颯が『邪魔だから僕もまとめてみようかな』なんて言い出し、似合ってしまったが為にそのまま撮影が始まった。 そんなわけでキッチンには、並んだヤシの木2本。休日感も増した気がする。 「こんなショートパンツ持ってないよ」 「勿体ない!その足は出してこそでしょ!」 「料理のときはエプロンするしね」 「ふりふりの?」 「パーティーしたとき見たことあるでしょ?シンプルなやつ」 「あれはあれでまた一興!やばい、またしばらくおかず不要だ」 「唐揚げ持って帰るって言ってなかった?」 テーブルでの食事の風景は撮らないと聞いて『今日の晩御飯に食べる!』と、持って帰る気まんまんだったはずなのに。 おかずじゃないならなんなのか。 「持って帰るよー?葵と食べる」 「会えると思ってたのに、今日はいないんだね」 「ちゃんとした男になってからキミと会いたいんだよ。今日は会社で木田さんからマネージャーとはなんたるか、のレッスン中」 陽紫から、必要以上に厳しくされてなければいいけど。
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