番外編 1

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「葵がさ、少しずつ変わっていく姿を見てたら…羨ましくなるね。だから僕も変わっていかなくちゃ」 颯のマネージャー業に励んでいる葵は、ずいぶん気持ちの切り替えに手こずっているらしい。 それでも、今までなら機嫌を損ねていたような場面でも、周りには気づかせまいと必死にバランスをとることに奮闘しているそうだ。 たまに溜まったうっぷんが颯に向かってマシンガントークされるみたい。そんなところは兄を手本にしなくてよかったのに。 全部、颯が嬉しそうに教えてくれる葵の近況。会議室で会って以来直接姿を見れていないから、こうして話題に出してくれることがありがたい。 颯が、足の届かない深さの海が苦手な理由。 葵が小さいときに溺れかけたのを咄嗟に助けようとしたら、自分まで溺れかけたからだと、まだ唐揚げを作っていたときにこっそり教えてくれた。 ふたりともご両親に助けられたらしい。 やっぱりいいなぁ兄弟って。どんなことでも、葵のことを話してる表情はお兄ちゃんの顔。 ちょっとしたエピソードにまで絆が見えて羨ましい。 「颯はどんな風に変わろうとしてるの?」 「そろそろ次の撮影始めますね、移動しましょう」 スタッフの声に繋がれていた手を引かれ、胸元に近づいたところで体が簡単に浮いた。相変わらずの、安定感。 「僕の幸せの在り方を追加したい」 「追加…?」 「それじゃあ行こうか。ふたりの愛を育める…ベッドの上へ」
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