番外編 1

42/66
前へ
/369ページ
次へ
「随分変わっちゃって。腹が立つね」 耳朶をくすぐられるとは予想していなかった体が跳び跳ねた。反動で距離が開きそうだったのに掴まれたままの手首で、やはり叶わなかった。 「露利にも教えておいたから、可愛がってもらってるんでしょ?ま、すぐ分かったと思うけど」 「いつ教えたんですか…」 「きっぱりお別れされたときだよ」 褒めるわけではないけど、さすが。 それ以上ない嫌がらせだ。 「それでさ、重婚どう?」 「今までの話聞いてました?」 「聞いてた結果プロポーズしてるんだけど?」 授業中、目が合ったときにくれた笑顔のまま。 もう立会人がいなくても、しっかり自分を保てるくらいになれた。あのときはコンタクトレンズが外れたばかりで、お別れをすることに精一杯だったな。 今なら? 怜さんに言ってやりたいこと。 してやりたいこと。 「なら、私のハジメテ…もう1つ、貰ってくれますか?今のところ怜さんにしかあげられそうになくて困ってます」 「またハジメテくれるんだ。楽しみだな」 「喉仏キレイですね」 昔好き勝手出来た相手の為に、油断しかしていなかったクソ野郎。苦しめばいいと思いながらその急所を手のひらで突いた。ぐにゅっと軟骨を押し込めた感覚がして気持ち悪い。 もともと距離も近かったし、初対面でもなければ感情をこめることもできて簡単だった。ほんの少しだけ、手加減はしておいてあげたけど。 ざまあみろ!
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

185人が本棚に入れています
本棚に追加