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実家の隣は陽紫の家。絶対に手を出してこないような良い案だと、しばらくは自分を誉めていたのに。
それが火をつけてしまったのか、日にちをかけてギリギリを責めて見極めようとし始めてきた。兄のような人が関わると燃えやすくなる彼だ。
「ふっ……ぅ、ぁ…ん…」
「…悪い」
「んっ…な、に?」
「味見で済まなそう」
いつもと変わらない機嫌に、晒している足と同様油断していた。裾からさらに内へ侵入してくる指が下着のレースまで到達する。
目の前にはついさっき綺麗についた焼き目にひとり喜んだ、うっすら湯気の立ち上るハンバーグ。
お米が炊けてくるいい匂いが充満する清潔なキッチン。
なのにふたりが出す音といえば、キッチン台を爪弾く硬い音と荒い呼吸に鼻を通る声。
いつもより面積の少ない下半身の服と下着が足元に落とされる微かな音は、夜と同じように自分を嘲笑わせてくれた。
そして、ベッドでよく聞く袋の開封音。
「え…?最初から味見で止まる気、なかっ、た…!」
「ペナルティは受け付けない。調理中じゃないから」
「ほ、ほんとにこのまま?ここで?」
「こんなに完璧に準備しておいてなに言ってるわけ?」
「う、ぁっ?!やっ…」
「いただきまーす…」
ハンバーグのことだよね、なんてさすがに思いはしない。
背後をとられているのがいけないんだ。姿が見えないからいつもより自分ひとりが盛り上がっている気がしてならない。
とろりと染み出てくるふたりにとっての旨味が割り開かれた内側から溢れてとまらず、自由に肌を確かめていた手は再び指を絡めて繋がった。
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