番外編 1

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初めてこの部屋に来た日からずっと続いている、欲同士がぶつかる合図の手。自然と腰が受け入れる角度まで持ち上がったそのとき。 濃密からはかけ離れた、間の抜けたようなメロディーがふたりの動きを止めた。 「あの…た、炊けちゃった、けど…」 「…あとで付き合ってくれる?」 耳朶を啄まれ、極上のため息のあと囁かれた回数は、以前自分が口にして後悔したものにさらに『1』足されてあった。 『気を失わせ上手』から『性欲無尽蔵』に貼りつける言葉を変えてやろうか。 「やっ!無理っ、無理ぃっ!」 「残念。じゃあこのままする」 「ひやぁっ」 幼稚な音に止められたはずの昂りは、いつコース料理が始まってもおかしくないような空腹に焦れる動きで追いつめてくる。 「も、分かった、からぁ…」 「いっぱい?」 必死に何度も頷いた。 「楽しみにしてる。撮影バンザイ」 ようやく『おいしい』と微笑んでくれる顔を眺める幸せな晩ご飯が始められる。 向かいで誰かも見た笑顔、か。 これから始まる健全なご飯にほろ苦さを感じながら、下着とショートパンツを拾うため屈みかけたは体は思いがけず抱え直された。
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