番外編 1

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「それで変だったのか?」 「…もうひとつある」 「全部吐け」 「先週女の人とふたりで…食事でもした?」 「してないよ」 遠くからでも見間違いを疑える容姿じゃないから、颯は嘘をついていないはず。シラを切られたことに胸の端が焼けた。 再びサーバーに注がれる湯で染み落ち、深さを増す苦さ。なにも返事ができないまま、時間をかけて溜めたものを一瞬でぶちまけてしまいたくなる。 「颯が、見かけたって」 「あいつは本当に余計なことしかしない」 「余計なこと?全然、そんなことない。…ひどい」 「言わないと駄目か」 「このままだと甘やかしてあげられない」 「…りっちゃんとコーヒー飲んだだけだよ」 りっちゃん。 頭の中で何度も、突然現れた友人の名前がこだまする。安堵していいのか、ふたりの接点が分からずとまどっていいのか。 なんだ。なぁんだ。りっちゃんかぁ。 「もー!早く言ってよ!」 「もちろん、偶然会っただけ」 「偶然。ふーん」 「妬いた?」 「妬きました!」 「敬語」 「妬いた!」 「いつかとおんなじ言い方」 「すぐ教えてくれても、良かったよね?」 明らかにわざとな気の引き方をしておきながら『偶然』と爽やかに言ってくる人と話した後だ。その響きに面白くなさと不信感も増す。 りっちゃんからなにも連絡がないこともおかしい。 『味は覚えてないけど超絶イケメンとティータイムは至福でしかなかった!』とか、踊り出しそうな文字で報告を兼ねた連絡がありそうなのに。 「30分くらい一緒にお茶してもらっただけだし、言わなくてもいいかと思って」 「ふーん。紅大から誘ったんだ」 「…まあ」
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