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心配になったものの、他にはどんな変わった様子の動物がでてくるのかと、ついページをめくり続けてしまいそうだ。
お互いがどんなことをしてるのかなんて筒抜けのような個室のない家。そんな作業をしている姿は見かけたことがない。
「あと、人名と特徴に合わせた語呂合わせを単語カードに書いてみたんだけど使う?」
「いつの間に、こんな」
「多香子が寝たあと。仕事の休憩時間にも少し。うちの事情に付き合って貰うわけだし、なにかしてやれないかと思って」
「もー…」
「ひとりで辛い思いをさせるつもりはない。これくらいしか出来ないけど…お手伝いはさせていただきますよ、女王様」
「ありがとう…!」
出会った頃から変わらないところもある。
綺麗な動作、姿勢。笑うと可愛い。
教え方が上手なところ。
1番変わったと思うところは、自分の為と言いながらも、何事もふたりでいられる為に行動してくれるところ。
それが結局は、私の為にも繋がってくる。
思う存分甘えさせてあげようと思っていた夜だった。なのに甘やかされたくてしょうがなく、触れる体に重みをかけ続ける。
どんどん狭まってくる腕。
妖しい動きに変わる手。
吐息。
「それで、さ」
「み、耳!やめっ!」
「何回したいの…?」
「え?!さ、さっき言われた回数はほんとに、無理だから…!」
「結婚」
無駄な勘違いで恥ずかしい。
プロポーズを2回されたという1日の報告を根に持っていたのか、勘違いさせるようにわざと聞かれた。
後ろの笑いを堪える体が、小さい振動を分けてくる。やっぱりさっき喉仏突いてやればよかった。
「そんなの…決まってるよ」
「何回」
「1回だけ」
「本当に?」
ベッドの上で伝える1回とはもちろん違う。
どうすればもっと伝わる?
この1回は口先だけじゃないと。
もっと実感してほしい。
もっともっと信じてほしい。
昨晩までそらしていた顔を、くじけてしまいそうな高さの塔に対峙させる。
「今日から毎日、勉強がんばるから!」
テーブルに積み上げられた『露利家に嫁ぐとはこういうこと』な資料の塔は、現在ひとつ。本当はまだまだたくさんある。
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