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「もう1回、だ、け…」
「終わったら、『あと1回』?」
「…っ…ん…ほんと、そう、なのかも…」
「…どうした?」
「あの、ね…?いまの、欲しがる、私…紅大からはどんな風に、見えてる…?」
「つぼみかな」
頬を撫でてくれながら。真剣な顔ですぐに返ってきた言葉に、昨晩のようにまたも状況を忘れた。視界の水たまりは波紋をつくり続ける。
思ってもいなかった可愛らしい例えが『愛してる』に聞こえたのは、耳がおかしくなってしまったからだろうか。
熱い声と視線に、込められた想いを感じる。
『やらしい女』『淫乱』『好色』
結局は毎回本音を引きずり出されるものの、彼を求めてしまうことに対する後ろめたさの理由に気がついた。
突然浴びせられた言葉は知らず知らず、深く刺さっていたらしい。
必死に堪えたもののこめかみをつたった雫は、理由も知らない手がゆっくりとぬぐってくれた。
「愛とは花を育てるようなものだって、有名な人が言ってたよ」
「そう、なんだ。花に…見えてるんだ」
「ここだけで咲く、俺だけの花」
全てが愛の言葉に聞こえて、全身が溶かされそうに熱い。
「間違っても知らないところで花が開かないように、全身に俺を教え込んでる。どうも引く手が数多なつぼみだから」
「どんな花が…咲くの?」
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