番外編 2

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全裸の女が、鏡の中で微笑んだ。 熱いシャワーがつたい落ちる体はまだまだ頼りなく、浮きでた足の骨が鶏を思わせる。 食用鶏(ブロイラー)なら、ひと目で出荷を見送られるだろうな。 飼われ慣れた考え方に、また笑う。 骨まわりの肉ほどうまい。 …らしい。 1ヶ月前、どれほど美味なのか真面目に説いた彼は、痩せた同居人を励ましたつもりだったのだろうか。 「もしかして私、非常食として飼われてる?」と問えば「さすがにもうちょっと肥えた方がいいな。ほら食え」と、食べかけの手羽先を差出してきた。つい受け取ったものの食べる気にならず、そのまま彼の口に突っ込んで返した。 「骨しか残ってないじゃない」 「ここからだ。よく見てろ…ほら」 慣れた手つきで細骨を開き、隙間の肉を食らい、軟骨までしゃぶりつくした。 唇を拭った親指と悪い目つきがセクシーだった。 迷わず引き寄せ、彼の口の中を貪るように食べた。 「ほんと。まだまだ味わえたわ。御馳走様」 「お、おお。いい出汁も、とれるらしいしな…」 髪を鷲掴んで乱暴に犯したオマケに、彼の艶る親指に両手を添えて(ねぶ)れば、呆気に取られながらも視線を外せない様子がまた、美味しかった。 今ではもう、初な反応をしなくなってしまった愛しい餓鬼との生活。痩せた体にほんのり、申し訳ない程度についた贅肉をみつけ、ついひとりで笑ってしまった。 幸せで嫌になる。 鏡の中、緩みきった表情にシャワーを浴びせた。 蛇口全開のお湯の勢いは暴力みたいに痛いだろうに。 微笑む女に、痣は増えない。
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