ケース4️⃣ 前世遺憾

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ケース4️⃣ 前世遺憾

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 「すいませ〜ん。」 晴れた午後のある日。 『タコ焼きハウス・エリーゼ』に来客があり、呼び声がする。 すぐに、店主の叶恵が店先に顔を出した。 見ると来客は、20歳代ぐらいの男女カップルである。 そこで叶恵は、すぐに気がつき疑問に思う。 「あれ? あなたたち、午前中もタコ焼きを買いに来てたわよね?」 そう言われたカップルは、男性の方はふっくらと太っていて、女性は痩せすぎているぐらい細い体型をしている。 叶恵は、タコ焼きを一度買いに来てくれた客の顔は、ほとんど覚えているのだが、このカップルは特徴的で印象が強かった為、尚更記憶に残っていた。 手足が枝ほども細い身体の彼女が、答える。 「そうです。午前中、タコ焼きを一パック買ったんですけど、ほとんど彼が食べてしまったので、もう一度買いに来たんです。」 「まあ、何回でも買いに来てくれるのは、私の方は嬉しいんだけど。」 叶恵が、嫌味っぽくニヤけながら言った。 「だから、最初に言ったじゃないか。僕は、一パックじゃ足りないって。」 彼女とは対照的に、まん丸と太っている彼氏が口を尖らせて不満を言う。 「まあまあ、もうイイじゃない。それより、何パック買うの?」 叶恵が、カップルをなだめる意味も含めて、話を進めた。 「えっと、私が1パックだから〜・・・、全部で、2パックで良いかな。」 細い彼女が言うと、太い彼氏が躍起になって言い含める。 「ダメダメ! 6パックだね。それぐらいじゃないと足りなくて、また来なくちゃならないよ。」 「そんなに、食べる〜?」 彼女は、少し呆れた顔で言った。 「食べるよ〜。足らないよ〜。」 彼氏は、自分のお腹をさすりながら答える。 見ていて、これ以上面倒臭い喧嘩に発展しそうな予感もあったので、すぐに叶恵が口を挟んだ。 「あ、了解〜! じゃあ、6パック焼くから。待っててね。」 そう言うと、いつものように手慣れた手つきで、タコ焼きを焼きはじめる。 太った彼氏は、携帯電話を扱いながら待ち時間を潰した。 彼女は、その横から携帯電話を時々、覗き込んでいる。
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