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冷たさがグラスから伝わってくるレモネードを飲みながら、チラリと鬼切店長を見る貴志。
家で過ごしているというのに、鬼切店長は相変わらず、きちんとした身なりをしており、オシャレをする事に余念がない。
「最近は、どうだ? 変わりないか?」
鬼切店長はソファで足を組み、微笑みながら聞いてきた。
「あ、大丈夫です。」
貴志が、一言答える。
「この前は、一緒にドライブに行ったなあ。たまには、気分転換に良いだろ。」
鬼切店長は、貴志に投げかけた。
「あ、ドライブ、楽しかったです。ありがとうございました。」
貴志は、レモネードのグラスを持ったまま、返答する。
その時、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。
「誰だろ?」
そう言うと、鬼切店長は立ち上がり、玄関の方へと出ていく。
貴志はそのままソファで、残りのレモネードを飲んだ。
その後、再び居間の入口が開くと、鬼切店長が戻ってきたのだが、誰かを連れているようだった。
「さ、まあ、どうぞ。」
その相手に、鬼切店長は誘導しながら、声をかける。
そうして居間に入ってきたのは、60歳代ぐらいの太っている男性で、ジャケットを着こなしている人だった。
その男性は居間に入る時に、貴志の存在に気がつき軽く頭を下げ、その後ろから鬼切店長が続いて入ってくる。
「あ、どうぞ。」
と、かしこまって鬼切店長が、その男性をソファへと案内した。
貴志もソファに座ったまま、頭を下げたのだが、どうしたものかと戸惑っている。
男性がソファに腰掛けてると、何やら鬼切店長は先程とは少し様子が違っていて、恐縮し慌ただしい。
その原因は、間違いなくこの来客である男性なのであろうが、この人物が一体誰なのか、貴志は知らなかった。
「いやあ、まさか家に来て頂けるとは。本当に、お久しぶりですね。」
鬼切店長は、その男性に懐かしそうに、声をかけている。
「前に住んでいたアパートへ行ったんだがね。さすがに、何年も経つから、もう住んではいないだろうと思っていたんだが。それで、そのアパートの管理人とかに聞いて、ここを調べて来たんだよ。」
来客の男性は、ソファにゆったりと座ると、貫禄たっぷりに鬼切店長へと話しかけた。
そんな簡単なやり取りを側で聞きながら、貴志は想像する。学校時代の担任の先生だろうか? それなら、久しぶりに訪問してきた先生との再会の時に、自分はお邪魔だろうから、帰ったほうが良いだろうか。
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