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その時、鬼切店長がやっと貴志に目をくれて、声をかけてきた。
「あ、そうだな。貴志は初めて会うだろう。」
そう言って前置きし、鬼切店長が来客の男性を紹介する。
「ほら。先日ドライブした時に話したんだが。峠のレストランの話。そのレストランのオーナーをしていた人だよ。」
貴志はレストランでの話は覚えていたので、すぐに理解出来たが、オーナーという方はそれほど話の中に登場しなかったので、うっすらと記憶している存在だった。
「あの峠のレストランでオーナーをしていた、曽我部 幸造さんだ。」
鬼切店長が、そう紹介する。
男性は、軽く頭を下げて挨拶した。
「こんにちは。はじめまして。」
貴志がつられて頭を下げている時、今度は鬼切店長が貴志のほうを紹介してくれる。
「あ、曽我部さん。覚えてますかね。叶恵。」
「もちろん、叶恵さんの事は、よく覚えているよ。」
曽我部は、ニコニコしながら答えた。
鬼切店長が続ける。
「その叶恵の息子の、貴志です。」
貴志は再び、頭を下げた。
曽我部は、驚きの声をあげる。
「おお、叶恵さんの息子かぁ。しかも、こんなに立派に大きくなって会えるなんてな。」
ここまで、取り次いだ後、
「ちょっと、ゆっくりしていてください。」
と言って、鬼切店長は居間を出ていった。
居間に残された、貴志と曽我部。
すぐに、曽我部が話しかけてくる。
「貴志くんかあ。叶恵さんの息子に、まさか会えるなんてな。・・・えっと今、いくつ?」
「あ、17です。高校2年です。」
貴志が答えた。
「そうかあ。17歳か。そんなになるんだなあ。私も歳をとるはずだな。」
曽我部は少し苦笑いしながら、しみじみと言う。
曽我部は、この大きなソファにきっちりと身体がハマる程、大きく太っていて体格がいい。白髪混じりの髪もオシャレにセットされていて、鼻下の髭が更に貫禄を引き立てている。
「峠のレストランの事は、話聞いてるのかね?」
「あ、まあ昔の話として、少しだけです。先日、鬼切さんにそのレストランの跡地に連れて行ってもらいました。」
貴志が、曽我部を見ながら答えた。
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