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そして、蜜子は辛い物は苦手だというのにそこは頭からすっぽ抜けているのか、毎度毎度誰が作っても激辛なのだ。
こんな主役ガン無視の誕生日があるだろうかと思うものの、気持ちだけは嬉しいから蜜子はなにも言えないのである。
せめてこれ以上喧嘩が激しくなりませんようにと祈りながら、三人がもめているリビングの横を通り過ぎようとして。
「じゃあさ、今回はみんなでカレー作って食べ比べしてもらうのはどう?」
ララの提案に足を止める。ちょうどコンロ三つあるし、と続く声に、蜜子は内心えー、と思った。カレーを三種類食べ比べ。聞くだけで胃がもたれそうだ。
思わず胃の辺りをさするリビングの外の蜜子には気づかずに、先程まで険悪だった三兄妹はそうだそうしようと仲良くうなずいていた。うそでしょう、という内心の声は届くことがない。
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