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ずっと前から好きだった。
けれど、自分がどんな性別で、どんな国籍で、どんな人種でも、恋人として舞奈に愛されるとは、到底思えなかった。
だから、舞奈が誰と付き合っても、幸せになってくれるならそれでよかった。
幸弥が舞奈のことでのろける度、叫び出したくなるほどの苦痛に襲われたが、彼ら二人の幸せが晃生を慰めてくれた。
それが今、舞奈が自ら深く傷つきながら、孤独に一人で歩き出そうとしている。
神様、お願いです。
俺を、どこの誰でも好きになれるようにしてください。
そうしたら、万が一この気持ちが抑えられなくなって、舞奈に想いを告げて苦しませてしまうようなことがなくなるでしょう。
なぜ、彼女でなくてはいけないのですか。
誰か一人を好きになるということは、喜びよりも、辛いことの方が多いのではないのですか。
どうして人間は、こんなにも生きづらくできているのですか。
この辛さから逃げおおせる道があるとしたら、そちらを歩めば、人は幸せに生きられるのですか。
とてもそうは思えないのに。
晃生は、生まれて初めて神に祈った。
さらに、語りかけもした。
柄にもないと自覚しながら、苦しい時の無駄な神頼みを笑えないと自嘲しながら、それでも止められなかった。
しかし人の体の外側の、世界のどこにも神様はいない。
終
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