好きだの嫌いだので人生決まってたまるかよ、誰も聞こえない歌じゃあるまいし

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「実は……僕、色崎の他に好きな人が出来たんだ」 「ほう」 「その人はタイ人の女性で、今まで僕は外国人の女の人なんて好きになったことがなかったんだけど、毎日のように色崎から恋愛の多様性について説かれているうちに、ふと気づいたらっていう感じで……」 「昨日、国や民族がどうとかも言っていたな。そっちが悩み事の本丸だったのか」 「だってこの頃は、色崎と来たら、僕が男や外国人を好きになれるようにって神頼みまでしてるんだよ。変な祭壇みたいなのを部屋に作って、そこに向かってお経みたいなの唱えてから、僕に『地球上の老若男女、全人類に恋ができるようになりなさい』って繰り返すんだ。そりゃ、愛だって揺らぐよ!」 「何だかもう色々絶望的な気分だが、本題に話を戻すぞ。その心変わりの件、色崎は知ってるのか?」 「……言った」 「で、なんだって? 彼氏が、ある意味念願の状態に近づいたわけだが」  幸弥は、唇を噛みながら、小さい声で答えた。 「……祝福して、応援するって。おまけに、女だけを好きになってるのはまだ覚醒しきれていない証拠なんだって説教されてる」 「覚醒ときたか。凄まじいな。筋金入りだ」 「筋金入りなのは、思想だけじゃないんだ。僕の心変わりは、色崎の願いが神に届いた証拠だからって、さらにあの変な神様に入れ込んでる。神様お願い、今度は彼氏が男にも恋をしますようにって」  晃生は、激しい目眩が、頭痛を誘発するのを覚えた。
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