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「まず、俺はこういう者です」
そっと差し出された名刺は誰もが知っている大手企業の名前が書かれていて、その下に「佐々木武蔵」と名前が書かれていた。
「俺が嘘ついていないか、会社に連絡して確認してくださってもいいですよ?」
私は大きく首を横に振る。男だということについて驚いたけれど佐々木さんがここで私に嘘をつく必要性なんて全くない。メリットないのに嘘つく人なんていないだろう。それにお問い合わせ先はよくテレビでこの企業のCМでよく見るから間違いないのは見てすぐ分かった。
「お堅いところに勤めていらっしゃるんですね。すごいと思いますし、またすごく大変でしょう?」
佐々木さんはまた苦笑し、小さく首を振った。
「慣れるまでは大変ですが慣れたらこっちのものです。それに誰もが知る大手企業の役職ある立場に就かないと一人暮らしなんてさせてもらえない状況だったから必死だっただけ」
「え、課長?!!」
控えめに少しだけ小さく書いてあった!名前ばかりに気を取られていて思いっきり見落としていた。それにしてもこの歳で課長とか、凄すぎない?お父さん達世代でもなれずに定年迎える人だっていっぱいいるのに。凄い。
「自分が自分らしく生きるためだったから頑張れました」
「自分らしく生きることが一人暮らしに関係するんですか?」
確かに一人だと好きな時間に好きなことができるけれど、私にはそこまで必死になって一人暮らしをしたいと思ったことがないけれどなあ。
「俺にとってはすごく大事なことだったんです!」
佐々木さんはお冷を一気に飲み干すと、通勤バッグから仕事で使う書類じゃなくきっと誰もが見たら驚くようなものが出してきた。
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