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大切そうに、大きい手には似合わないマスコットを包み込むと佐々木さんは小さく苦笑した。
「気持ち悪いでしょ?男が可愛い物集めてるなんて」
その言葉を出すこと自体が自身を一番傷つける言葉なのになのに、敢えて自分で言う。私から直接言われるのを避けるように。自分を守るように。
「武蔵と言う名前を付けるくらい、うちの親は俺が誰よりも強く男らしく育ってほしいと思っていたそうです。けど、小さいころから俺が好きなものは車よりぬいぐるみ。戦隊ヒーローものなんて興味ない。…ほら、誕生日やクリスマス時って男の子達って何としてでもヒーローたちの剣やベルト、欲しがるでしょ?俺、全く興味なくて親から欲しくないかと聞かれたくらいです。そして女の子たちが好きなゆるふわの可愛い物を手に取ってばかりする俺をよく父は叱っていたし、母は泣いていました。そのことが原因で夫婦喧嘩もしょっちゅうで。だからあの人たちの前では理想の息子を頑張っていたけれどやっぱり俺自身辛かったから、早くひとり暮らしをして自分らしく生きたいと思ったんです」
一人暮らしを渇望していた理由が楽しいものではなくてこんなに辛くって私が言葉を失う。佐々木さんは更にもっと胸が苦しくなるようなことを言った。
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