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佐々木さんが帰ってしまうのを阻止するためにとっさに手を掴んでしまったけど男の人っていうゴツゴツした手に改めて、カプチーノちゃんが男だって知ることになる。
でもここで終わってはいけない。今伝えなきゃきっと後悔する。
「私だってあのゲームの時間が一日で一番好きだったよ。仕事でうまくいかなかったり、嫌なことがあっても頑張れたのはカプチーノちゃん…佐々木さんのおかげだよ。そんな意味わかんない理由で距離取らないでよ。一生の別れにしないでよ!もしそんなことしたら絶対許さないんだから!」
店内の女性客が私達のやり取りを怪訝そうに見て店員さんに報告している。店員さんも喧嘩かと思ったのか口元をぎゅっと引き締めてこちらに向かってくる。
あーあ。この店のホット野菜サンドすごく美味しかったからもう一度来たかったのに。もう来れないじゃん。
「お客様、どうされましたか?」
どう答えればいいんだ。頭の中が真っ白、何も考えれない。
「いえ。今テーブルの上に、取引先で交換した大事な名刺を置き忘れてしまっていて。彼女が慌てて呼び止めてくれたんです。おかげで上司に怒られなくて済みましたよ」
佐々木さんはとっさにそれらしい嘘をつき、その嘘を現実のものにするため名刺入れを店員さんに見せた。
「…たしかにテーブルと同じ色の茶色のケースですしお客様がお忘れにならなくて良かったです」
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