落としもの拾いの有機探査

2/14
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 不格好だ。不格好だが、彗星が軌道に落としていった小石やら微細な塵やらを効率よく集めるためには適した形でもあった。左右の円筒に逆方向に力をかければ、船は円盤を描くように回転する。回転ついでに『落としもの』を幕で集めるという寸法だ。回転による遠心力で蛇腹は伸びて円筒は徐々に離れていく。円筒に設置された収集幕も一緒に外へと動いていく。回転し続けることで全長は伸び、より広い範囲で収集できる。提示された予算と計画から、円筒(ユニット)の計画、船の組み立て、各種資材やら必要物資の調達までを請け負ったのもジンだった。つい、にやりと口元が緩む。  ジンは端末を操作する。ヘルメットのシールドディスプレイに情報が映し出される。船の位置と自分の位置、向いている方向に、あらかじめレーダーで観測していた各種データ。 「さてと」  ジンは呟く。 「彗星の、落としもの拾いと行きますか!」  落下物収集用標準装備『塵取り幕』を取り出して、あたり一面を浚い始める。  あるかなしかの手応えがあったような気がしなくもない。すくい取った落としものが慣性で飛び出さないよう動かしたままクチを縛る。この辺りの要領は地球圏の内外問わず何ら変わることはない。ジンはこの道に入り既に二〇年を重ねていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!