落としものを君にあげる

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「あみちゃん、本当に出ていってしまうのかい?」 元彼から電話がかかってきた。 「出ていくわよ。何度も言ったでしょう」 「僕たち、もうやり直せないの?」 「それも何度も言ったでしょう。無理よ」 私は上を見上げる。 マンションのベランダに元彼が携帯を片手に立っていた。 こちらを悲しそうな顔で見ている。 私はさっき、彼と一緒に住んでいたマンションの部屋から出ていった。 「荷物も運んだし、これから私は新しい場所で生活するの。 この電話が終わったら、携帯を買い替えてあなたとの連絡を絶つわ」 「そう・・・」 「じゃあ、切るわ。さよなら」 「ちょっと待って!あみちゃん、落としものがあったよ」 「落としもの?」 私は上を見上げる。 上から何か落ちてきた。 それは私の目の前にドンッと大きな音を立てて落ちる。 顔に生暖かい液体が飛び散った。 目と鼻の先に血まみれの男が倒れている。 男の手から携帯が落ちた。
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