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江口先生の目が厳しかった。それだけ先生も思い入れが強いのだろう。
「広がって。体操から」
いち、に、さん……。素振りに励む僕たちに他の剣道団からの冷やかな視線が刺さる。僕は何も気にならなかった。
午前の個人戦を終え、皆で作戦を話しながら昼飯を食べた。陣は負けたらほんとに言うことを聞くらしく、京子が輪に入れと言えば渋々と加わっていた。
「っし、いこうぜ」
食べ終えた古賀ちゃんが勢いよく立ち上がる。
「待ってよ、まだ食べとうやん」
京子が気持ちはやる古賀ちゃんを引っ張り座らせる。
「僕も食べたよ」
僕もワクワクして立ち上がる。
「補欠が張りきってんちゃうぞ」
陣が舌打ちして言う。
小暮くんと中野くんが苦笑いした。
さあ、勝負の団体戦だ。
順調だった。
僕たち神宮小剣道団は躍動する。あれよあれよと準々決勝まで勝ち上がっていた。
昨年は京子だけが勝ち、六年の先輩たちが負け、神宮小は準決勝で姿を消した。三位決定戦でも京子だけしか勝てなかった。
今年は違う。
次鋒に入った小暮くんはなかなか勝てないが、先鋒の古賀ちゃんと中堅の中野くんが何とか補完し合う。古賀ちゃんが負けたら中野くんが勝ち、中野くんが負けてもその時は古賀ちゃんが勝っている。
つまり、今年の神宮小剣道団は先鋒から中堅まで少なくとも一勝二敗で繋いでいく。その後に控えるのは、ここまで二本勝ちで全勝の副将、陣。それに、大将の京子が続く。
この準々決勝まで神宮小剣道団は、常に三勝以上の勝ち星を上げながら順調に駒を進めていたのだ。
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