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準決勝前、僕たちは江口先生に集合をかけられた。また怒られるのではないかと、縁石に座って緊張していた。
「良かぞ。しっかり声も出とう。頑張って練習してきたからぞ。みんな、強うなっとう」
まだ大会は終わっていないのに、よほど江口先生が言いそうにない台詞を吐いた。ホッとしたように小暮くんや古賀ちゃんが表情を緩める。
僕は、なぜ江口先生がこのタイミングで褒めたのかを考えていた。
ひとつ、気になることがあった。それは、陣が京子に向ける目に表れていた。
「おい、女男。俺なら全部余裕で勝ってんで。お前、大将荷が重いんとちゃうか?」
陣が京子へ嫌みを放った。京子はそれを無視した。
そう。陣の言い方はいつも通り腹が立つものの、陣の主張は僕も気にしていたことだった。
今日の京子には圧倒的な強さが無いのだ。辛うじての一本勝ちであったり、何しろ相手が踏み込めないほどの気迫が鳴りを潜めている。
それは、陣を差し置いて大将を任された重圧からなのか、それはまだ誰にも分からなかった。
「京子、大丈夫?」
そっと見つからないように声をかけた。
「……は? あんたに言われる筋合い無いっちゃけど」
いつものようにはねのけられたが、京子は座ったままだった。いつものように目の前に立ち、見下されることはなかった。
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